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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第7章 ♦RoundⅥ(天使の舞い降りた日)♦
―そう、良かったじゃない。
努めて狼狽えないように、余裕を滲ませて祝福するのが精一杯。でも、自宅に帰ってからは二階の自室に駆け上がり、ベッドに打ち伏して泣いた。
どうして、もっと早くに告白しなかったんだろう? 自分をどれだけ責めてみたところで、時は既に遅かった。有喜菜の性格からして、既に纏まってしまった直輝と紗英子の間に割り込もうとまでするつもりはなかった。
だが、妙だとも思った。紗英子はこれまで一度も、直輝のことを好きだと話したこともなく、それらしい態度を示したこともなかった。小学校のときには、クラスの初恋の男の子について、それはもう煩いくらいに毎日、聞かされたはずなのに。
もしかしたら、あの頃、紗英子は紗英子なりに、有喜菜の存在を牽制していたのかもしれない。そのことに疎い有喜菜が気づかなかっただけで、紗英子は有喜菜を警戒し、将来はライバルになり得ると判断して、有喜菜には直輝が好きだという気持ちを気ぶりほども見せずに彼に近づいたのだろう。
努めて狼狽えないように、余裕を滲ませて祝福するのが精一杯。でも、自宅に帰ってからは二階の自室に駆け上がり、ベッドに打ち伏して泣いた。
どうして、もっと早くに告白しなかったんだろう? 自分をどれだけ責めてみたところで、時は既に遅かった。有喜菜の性格からして、既に纏まってしまった直輝と紗英子の間に割り込もうとまでするつもりはなかった。
だが、妙だとも思った。紗英子はこれまで一度も、直輝のことを好きだと話したこともなく、それらしい態度を示したこともなかった。小学校のときには、クラスの初恋の男の子について、それはもう煩いくらいに毎日、聞かされたはずなのに。
もしかしたら、あの頃、紗英子は紗英子なりに、有喜菜の存在を牽制していたのかもしれない。そのことに疎い有喜菜が気づかなかっただけで、紗英子は有喜菜を警戒し、将来はライバルになり得ると判断して、有喜菜には直輝が好きだという気持ちを気ぶりほども見せずに彼に近づいたのだろう。