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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第7章 ♦RoundⅥ(天使の舞い降りた日)♦
 有喜菜は溜息をつき、緩慢な動作でベッドに身を起こした。その時、突如として烈しい吐き気が胃の底からせり上がってきて、有喜菜は手のひらで口許を押さえた。
 狼狽えながらトイレに駆け込み、便座に掴まり覗き込むようにして吐いた。
「ううっ、う―」
 恐らく今夜、紗英子と一緒にいたときに食べたものはすべて戻してしまったのではないか。それほどに吐いた。
 漸く頑固な吐き気が治まってから、有喜菜は吐瀉物を流し、トイレを出た。洗面台で口をすすぎ、顔を洗うと少しは気分が良くなったが、不快感はまだ体内に残っている。
 悪阻が始まったのかもしれない。
 有喜菜は茫然と鏡の中の自分を見つめた。
 過去に三度の妊娠を経験しているが、悪阻らしい悪阻を経験したことはない。異変が起こるまで妊娠経過は至って順調だった。
 鏡の中の女は蒼白く、透き通るように不健康な血の気のない顔をしている。唇はルージュも落ちて、酷い有様だ。
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