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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第8章 ♦RoundⅦ(再会)♦
 紗英子から贈られたこの時計も実をいえば、外してしまいたい。しかし、それをしてしまえば、自分たち夫婦の仲は本当におしまいなのだと判っているから、できないでいた。
 直輝は三度目の溜息を盛大につき、心もちネクタイを緩めた。
 その時。内線が鳴り響き、直輝は眉を顰めて電話を取った。
「もしもし」
「矢代課長、外線三番にお電話です」
 どこか舌っ足らずな口調なのは、受付課の小泉満奈美に違いない。
「ああ、判った」
 直輝は事務的な口調で言った。
 と、急に満奈美の口調が馴れ馴れしいものへと変わった。
「課長も隅に置けないんですね。女性の方ですよ、電話」
「君には関係ない話だろう」
 直輝は努めて冷淡に断じる。この小泉満奈美という女には手を焼いていた。
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