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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第8章 ♦RoundⅦ(再会)♦
「なに水臭いことを言ってるんだ。君に〝直輝さん〟なんて呼ばれた日には、それこそ鳥肌が立つよ」
―ふふっ、相変わらず酷い物言いね。
有喜菜は華やかな笑い声を立てる。先刻までの昔通りの爽やかでボーイッシュだった有喜菜をイメージさせる声とは違い、どこか艶のある色っぽい声に思わずドキリとした。
「そういえば、紗英子と時々逢ってるんだって」
妻の名前を出すことによって、直輝は不自然に高鳴る自分の鼓動を止めようと試みた。
受話器越しに、少しの沈黙があった。
やはり、久しぶりに電話を掛けてきた女友達に対して妻を持ち出すべきではなかったか? 直輝が柄にもなく狼狽えていると、有喜菜はまた涼やかな声で笑った。
―ええ、奥さまとは今も懇意にさせて頂いてるわよ。
どこか皮肉っぽくも聞こえる口調に、直輝は更に慌てた。
「あ、どうだ、久しぶりだし、今度、一緒に飯でも食わないか?」
これでは中一の頃の自分と全く変わっていない。直輝は自分でも苦笑した。
―ふふっ、相変わらず酷い物言いね。
有喜菜は華やかな笑い声を立てる。先刻までの昔通りの爽やかでボーイッシュだった有喜菜をイメージさせる声とは違い、どこか艶のある色っぽい声に思わずドキリとした。
「そういえば、紗英子と時々逢ってるんだって」
妻の名前を出すことによって、直輝は不自然に高鳴る自分の鼓動を止めようと試みた。
受話器越しに、少しの沈黙があった。
やはり、久しぶりに電話を掛けてきた女友達に対して妻を持ち出すべきではなかったか? 直輝が柄にもなく狼狽えていると、有喜菜はまた涼やかな声で笑った。
―ええ、奥さまとは今も懇意にさせて頂いてるわよ。
どこか皮肉っぽくも聞こえる口調に、直輝は更に慌てた。
「あ、どうだ、久しぶりだし、今度、一緒に飯でも食わないか?」
これでは中一の頃の自分と全く変わっていない。直輝は自分でも苦笑した。