この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第8章 ♦RoundⅦ(再会)♦
その夜になった。午後七時、直輝は会社近くのピアノ・バー〝Cat,s Eye〟の扉を押した。
この店はマスターが殆ど趣味でやっているようなものである。脱サラした五十代後半のマスターは銀髪の知的な雰囲気だ。直輝は会社帰りにしばしば立ち寄り、仕事の悩みなどをよく打ち明けている。父親に対するのに近い心情を抱いていた。
直輝の父は十年前に他界している。もし父親が生きていれば、こんな話もしただろうにと思う気持ちがマスターに向いているのかもしれなかった。
雑居ビルの三階にある店は手狭ではあるが、ワインカラーの落ち着いた内装で統一されており、ほの暗い照明がまるで深海の底にいるような錯覚をさせる。
カウンター席が幾つかと、他には壁沿いにテーブル席が三つ。片隅にこの店の呼び物であるグランドピアノが存在感を主張している。
この店はマスターが殆ど趣味でやっているようなものである。脱サラした五十代後半のマスターは銀髪の知的な雰囲気だ。直輝は会社帰りにしばしば立ち寄り、仕事の悩みなどをよく打ち明けている。父親に対するのに近い心情を抱いていた。
直輝の父は十年前に他界している。もし父親が生きていれば、こんな話もしただろうにと思う気持ちがマスターに向いているのかもしれなかった。
雑居ビルの三階にある店は手狭ではあるが、ワインカラーの落ち着いた内装で統一されており、ほの暗い照明がまるで深海の底にいるような錯覚をさせる。
カウンター席が幾つかと、他には壁沿いにテーブル席が三つ。片隅にこの店の呼び物であるグランドピアノが存在感を主張している。