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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第8章 ♦RoundⅦ(再会)♦
「こんばんは」
 会社では既に営業課長の肩書きを与えられ、若い部下からは一目置かれている。が、この店に来ると、父親ほど歳の違うマスターには礼を尽くすのはいつものことだ。
「ところで、良い女ですね」
 流石に聞こえては罰が悪いので、小声で囁くと、マスターは小さく肩を竦めた。
「よく言うよ。矢代君の待ち人だろう」
 え、と、直輝は愕いて振り返った。
 と、丁度、黒いドレスの女が顔を上げたところだった。視線と視線が宙で絡み合う。
「久しぶり」
 女の美しい面に、艶やかな微笑が浮かんでいる。すっかり臈長けて見違えるように綺麗になってしまった美貌の中、かすかに少女時代の有喜菜の面影が垣間見えた。
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