この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第8章 ♦RoundⅦ(再会)♦
しかし、それで、大切な有喜菜を非情にも利用したことを許せるかといえば、また別の話である。
「有喜菜、ありがとう」
知らず、そんなことを口走っていた。
「身体を大切にして、無事に身二つになってくれ」
照れくさかったので、早口で告げた。
そんな直輝を、有喜菜は謎めいた微笑を湛えて見つめている。
マスターの姿は、いつしか消えていた。控え室のようものがあるから、気を利かして、そこに籠もったのだろう。
普段から、客の身の上相談には快く応じるが、けしてマスターの方から踏み込んでくることはない。それがこの店の人気の秘訣なのだ。
その後、二人は一時間ほど他愛ない話をしてから、店を出た。直輝はタクシーで有喜菜をマンションの前まで送り届けた。
「少し寄っていく? コーヒーでも淹れるけど」
その魅惑的な誘いに思わず頷いてしまいそうになりながら、直輝は意思の力を総動員して断った。
「有喜菜、ありがとう」
知らず、そんなことを口走っていた。
「身体を大切にして、無事に身二つになってくれ」
照れくさかったので、早口で告げた。
そんな直輝を、有喜菜は謎めいた微笑を湛えて見つめている。
マスターの姿は、いつしか消えていた。控え室のようものがあるから、気を利かして、そこに籠もったのだろう。
普段から、客の身の上相談には快く応じるが、けしてマスターの方から踏み込んでくることはない。それがこの店の人気の秘訣なのだ。
その後、二人は一時間ほど他愛ない話をしてから、店を出た。直輝はタクシーで有喜菜をマンションの前まで送り届けた。
「少し寄っていく? コーヒーでも淹れるけど」
その魅惑的な誘いに思わず頷いてしまいそうになりながら、直輝は意思の力を総動員して断った。