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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第9章 RoundⅧ(溺れる身体、心~罠~)♦
皮肉なものだと思う。かつて自分は三度も妊娠したけれども、三人の子どもは一人として育たなかった。なのに、四度目の今回の妊娠では何のトラブルもなく、赤ん坊は医師も愕くほど順調に発育し、有喜菜自身も至って模範的な妊娠経過を辿っている。
やはり、自分の遺伝子を持った子どもだから、いけなかったのだろうか。今、有喜菜の胎内で育っている子どもは、有喜菜の血を一滴たりとも引いてはいない。だからこそ、今回の妊娠は順調に継続しているのだろうか。
問題は、有喜菜自身にあったのか? 一度だけ、有喜菜は医師に訊ねたことがある。S市のクリニックで行われる健診には、いつも紗英子が我が者顔でついてくるから、訊くことはできない。だから、安定期の五ヶ月に入るまで注射に通っていた近くの小さな個人病院に行って訊ねたのである。
やはり、自分の遺伝子を持った子どもだから、いけなかったのだろうか。今、有喜菜の胎内で育っている子どもは、有喜菜の血を一滴たりとも引いてはいない。だからこそ、今回の妊娠は順調に継続しているのだろうか。
問題は、有喜菜自身にあったのか? 一度だけ、有喜菜は医師に訊ねたことがある。S市のクリニックで行われる健診には、いつも紗英子が我が者顔でついてくるから、訊くことはできない。だから、安定期の五ヶ月に入るまで注射に通っていた近くの小さな個人病院に行って訊ねたのである。