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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第9章 RoundⅧ(溺れる身体、心~罠~)♦
その日、有喜菜と直輝は、かつて有喜菜が注射に通っていたクリニックを訪れた。S市のクリニックには直輝は行けない。紗英子はまだ有喜菜と直輝のことを知らないからだ。
有喜菜が診察を受ける間中、直輝は始終、緊張した面持ちで付き添っていた。有喜菜の大きなお腹に医師が超音波を当てると、傍らのモニターに胎児の画像が映し出される。
直輝は神妙な顔でその画像を見守り、医師からの説明を逐一聞いていたが、
―元気なお子さんですよ。ほら、これが両脚。
そう言って医師が胎児の脚の部分を指し示した途端、胎児が力強くキックして、現実に有喜菜の大きくせり出した腹部が烈しく動いた。
―何とも生まれる前から元気な赤ちゃんですな。もうかなり大きくなってきてますから、お母さんのお腹の中が狭くて苦しいのかもしれませんね。
医師は有喜菜が代理出産を引き受けた妊婦であることも知っているはずなのに、付き添っている直輝との関係は全く訊ねなかった。
有喜菜が診察を受ける間中、直輝は始終、緊張した面持ちで付き添っていた。有喜菜の大きなお腹に医師が超音波を当てると、傍らのモニターに胎児の画像が映し出される。
直輝は神妙な顔でその画像を見守り、医師からの説明を逐一聞いていたが、
―元気なお子さんですよ。ほら、これが両脚。
そう言って医師が胎児の脚の部分を指し示した途端、胎児が力強くキックして、現実に有喜菜の大きくせり出した腹部が烈しく動いた。
―何とも生まれる前から元気な赤ちゃんですな。もうかなり大きくなってきてますから、お母さんのお腹の中が狭くて苦しいのかもしれませんね。
医師は有喜菜が代理出産を引き受けた妊婦であることも知っているはずなのに、付き添っている直輝との関係は全く訊ねなかった。