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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第9章 RoundⅧ(溺れる身体、心~罠~)♦
その真摯な表情から、赤ん坊の父親であることは容易に想像がついたはずだ。代理母と胎児の遺伝子上の父親が本物の両親であるかのように睦まじく寄り添って健診を受けにきた―その異常な事実を訝しくは思っただろうが、態度には出さなかった。
よほどの事情があることは自ずと伝わったのだろうか。
医師がにこやかに言った時、有喜菜は直輝の頬が濡れているのに気づいた。彼は、有喜菜の腹部を元気に蹴る赤ん坊を見て、泣いていたのだった。
その時、有喜菜は思ったものだ。やはり、直輝も人並みに我が子が可愛いのだと。たとえ代理出産という尋常ではない手段で得た子でも、彼にとっては紛れもない我が子なのだ、と。
そして、有喜菜は更にその先を考えた。直輝が生まれてくる子に父としての愛情を感じているならば、自分たちに未来はない。やがて直輝は紗英子の許に戻るだろう。
よほどの事情があることは自ずと伝わったのだろうか。
医師がにこやかに言った時、有喜菜は直輝の頬が濡れているのに気づいた。彼は、有喜菜の腹部を元気に蹴る赤ん坊を見て、泣いていたのだった。
その時、有喜菜は思ったものだ。やはり、直輝も人並みに我が子が可愛いのだと。たとえ代理出産という尋常ではない手段で得た子でも、彼にとっては紛れもない我が子なのだ、と。
そして、有喜菜は更にその先を考えた。直輝が生まれてくる子に父としての愛情を感じているならば、自分たちに未来はない。やがて直輝は紗英子の許に戻るだろう。