この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第3章 ♠RoundⅡ(哀しみという名の現実)♠
まるで女性雑誌の一ページを見るようなワンシーンに、紗英子もつい見惚れてしまうほどだった。その少し愁いを帯びた物憂げな表情といい、優美でありながら、どこか退廃的で官能的な雰囲気を漂わせる仕草といい、プロのモデルか女優のようだ。座っているだけで絵になるとは、まさに有喜菜のような女のことを言うのだろう。
さしずめ、紗英子は親友の引き立て役か、良くて観客といったところ。悔しいけれど、今の有喜菜とでは比べものにすら、ならない。
「腕時計なんて、どうかしらね」
突如として有喜菜が言葉を発し、紗英子はハッと息を呑んだ。
「腕時計?」
我ながら、素っ頓狂な声が出て恥ずかしくなった。
「直輝って、時計集めが趣味みたいなところがあるのよ」
「時計を集めるのが趣味?」
紗英子は首を傾げる。夫にそんな趣味があっただろうか。記憶を手繰り寄せてみても、思い当たる節はなかった。
「そんな趣味が彼にあったかしら」
「私が前に直輝の家に遊びにいった時、見せてくれたのよ。もう引き出しに溢れんばかりに一杯。もちろん、中学生が集めたものだから、そんなに高価なものはなかったけれどね」
「知らなかったわ。直輝さんにそんな趣味があるのも、有喜菜が彼の家に遊びにいったことがあるのも」
つい語調がきつくなってしまったのに、有喜菜が気づいたようだ。
さしずめ、紗英子は親友の引き立て役か、良くて観客といったところ。悔しいけれど、今の有喜菜とでは比べものにすら、ならない。
「腕時計なんて、どうかしらね」
突如として有喜菜が言葉を発し、紗英子はハッと息を呑んだ。
「腕時計?」
我ながら、素っ頓狂な声が出て恥ずかしくなった。
「直輝って、時計集めが趣味みたいなところがあるのよ」
「時計を集めるのが趣味?」
紗英子は首を傾げる。夫にそんな趣味があっただろうか。記憶を手繰り寄せてみても、思い当たる節はなかった。
「そんな趣味が彼にあったかしら」
「私が前に直輝の家に遊びにいった時、見せてくれたのよ。もう引き出しに溢れんばかりに一杯。もちろん、中学生が集めたものだから、そんなに高価なものはなかったけれどね」
「知らなかったわ。直輝さんにそんな趣味があるのも、有喜菜が彼の家に遊びにいったことがあるのも」
つい語調がきつくなってしまったのに、有喜菜が気づいたようだ。