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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第3章 ♠RoundⅡ(哀しみという名の現実)♠
「そうよね。私も有喜菜の言うとおりだと思ったの。どうせお祝いできないから、黙っておこうとか気を回したんだと思う。それでね、今年は私の方からクリスマスイブに記念日と兼ねてお祝いしようって彼に提案するつもり。毎年、ずっとプレゼント貰ってばかりだったのに、私の方からは一度もあげたことないし、思い切って彼にもあげちゃおうと思って」
やはり、少しの優越感が言葉に出てしまうのは致し方なかった。
幾ら良い女になっても、夫も子どももいないのではお話にもならない。その点、自分には子どもはいないけれど、有名企業に勤め、ルックスも良くて優しい夫がいる。どちらが立場が有利かは一目瞭然だ。
「ふうん、それで私に相談って、なあに」
有喜菜はいかにも気のなさそうな様子で訊いてくる。自分の心中は棚に上げ、紗英子は不愉快だった。
「何が良いと思う? 彼へのプレゼント」
有喜菜がやっと笑った。
「やだ、私に訊かないでよ。紗英は直輝の奥さんで、十二年も側にいるんだから、彼のことはよく知っているでしょう」
「それが判らないのよ、正直。私って、直輝さんに何かをして貰ってばかりで、あまりしてあげたことなんてなかったから」
「やっぱり、紗英。あなた、幸せ者よ」
有喜菜はしみじみとした口調で言い、しばらく思案げに考え込んだ。ほっそりとした綺麗な両手を組み、テーブルに肘をついている。
やはり、少しの優越感が言葉に出てしまうのは致し方なかった。
幾ら良い女になっても、夫も子どももいないのではお話にもならない。その点、自分には子どもはいないけれど、有名企業に勤め、ルックスも良くて優しい夫がいる。どちらが立場が有利かは一目瞭然だ。
「ふうん、それで私に相談って、なあに」
有喜菜はいかにも気のなさそうな様子で訊いてくる。自分の心中は棚に上げ、紗英子は不愉快だった。
「何が良いと思う? 彼へのプレゼント」
有喜菜がやっと笑った。
「やだ、私に訊かないでよ。紗英は直輝の奥さんで、十二年も側にいるんだから、彼のことはよく知っているでしょう」
「それが判らないのよ、正直。私って、直輝さんに何かをして貰ってばかりで、あまりしてあげたことなんてなかったから」
「やっぱり、紗英。あなた、幸せ者よ」
有喜菜はしみじみとした口調で言い、しばらく思案げに考え込んだ。ほっそりとした綺麗な両手を組み、テーブルに肘をついている。