この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第9章 RoundⅧ(溺れる身体、心~罠~)♦
有喜菜はお守りをそっと握りしめてから、ジャンパースカートの肩紐に結びつけた。
「あなたのママからの贈り物よ。だから、最後まで一緒に頑張ろうね」
有喜菜は本物の子どもが側にいるかのようにお腹を撫でながら、話しかける。すると、すぐに合図に応えるかのように、キックしてくる反応があった。
「ふふ、紗英子は私と違って昔から成績良かったものね。あなたもママに似て、きっとお利口さんなのね」
有喜菜はお腹を撫でながら、話しかける。
また数回、胎児が腹壁を蹴ってきた。
いつしか有喜菜は泣いていた。だが、この涙が何に対する涙かは有喜菜自身にも判らなかった。
―考えてみれば、紗英子も含めて俺たちは出発点を間違えてしまったんだろうな。
ただ、この時、有喜菜の耳奥では、公園で直輝が呟いた言葉がありありと甦っていた。
何故、私たちは、こうなってしまったのだろう。かつての親友が親友ではなくなり、夫婦が別れるようなことになってしまったのか。
「あなたのママからの贈り物よ。だから、最後まで一緒に頑張ろうね」
有喜菜は本物の子どもが側にいるかのようにお腹を撫でながら、話しかける。すると、すぐに合図に応えるかのように、キックしてくる反応があった。
「ふふ、紗英子は私と違って昔から成績良かったものね。あなたもママに似て、きっとお利口さんなのね」
有喜菜はお腹を撫でながら、話しかける。
また数回、胎児が腹壁を蹴ってきた。
いつしか有喜菜は泣いていた。だが、この涙が何に対する涙かは有喜菜自身にも判らなかった。
―考えてみれば、紗英子も含めて俺たちは出発点を間違えてしまったんだろうな。
ただ、この時、有喜菜の耳奥では、公園で直輝が呟いた言葉がありありと甦っていた。
何故、私たちは、こうなってしまったのだろう。かつての親友が親友ではなくなり、夫婦が別れるようなことになってしまったのか。