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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第10章 ♦RoundⅧ 予知夢~黒い霧~♦
直輝は一瞬、整った顔を強ばらせ、信じられないといった表情で言った。
―本当なのか? その話って。
―それは判らないわ、でも、私も有喜菜から直接聞いたんだけど、どうなのかしらね。
いつも歳の割には大人びて滅多なことで取り乱したことのない直輝が顔色を変えて、立ち上がった。
彼はもう紗英子のことなど眼中にもない様子で、校庭から教室へと駆け戻っていってしまった。後には桜の樹の下に残された紗英子と、まだ殆ど手つかずの弁当二つ。その日のの朝、五時起きで紗英子が腕によりをかけて直輝のために作った弁当だったのに、彼は見向きもしなかった。
あの時、紗英子は思ったものだ。有喜菜なんて、大嫌い。直輝が有喜菜を好きなのかどうかまでは判らなかったけれど、何か特別な感情を抱いているのは間違いない。
さもなければ、有喜菜が他の男の子を好きらしい―と聞いただけで、血相変えて飛んでいくはずはない。
―本当なのか? その話って。
―それは判らないわ、でも、私も有喜菜から直接聞いたんだけど、どうなのかしらね。
いつも歳の割には大人びて滅多なことで取り乱したことのない直輝が顔色を変えて、立ち上がった。
彼はもう紗英子のことなど眼中にもない様子で、校庭から教室へと駆け戻っていってしまった。後には桜の樹の下に残された紗英子と、まだ殆ど手つかずの弁当二つ。その日のの朝、五時起きで紗英子が腕によりをかけて直輝のために作った弁当だったのに、彼は見向きもしなかった。
あの時、紗英子は思ったものだ。有喜菜なんて、大嫌い。直輝が有喜菜を好きなのかどうかまでは判らなかったけれど、何か特別な感情を抱いているのは間違いない。
さもなければ、有喜菜が他の男の子を好きらしい―と聞いただけで、血相変えて飛んでいくはずはない。