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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第10章 ♦RoundⅧ 予知夢~黒い霧~♦
何事にも消極的で大人しく、いつもクラスの喧噪の片隅で縮こまっているような自分が何故、あんなにも積極的にふるまえたのかも判らない。それほどあからさまに直輝に近づいていった。
例えば、休み時間にわざと数学の問題集を持っていって、〝ここが判らないの、教えてくれない?〟と訊ねてみたり、あるときは手作りの弁当を二人分持参してみたり。
そんなある日、直輝に突然、訊ねられた。
―有喜菜って、誰か好きな男はいるのかな?
あれは紗英子にとって思いもかけぬ爆弾発言であった。
―さあ? どうなのかしら。
紗英子は愛らしく首を傾げながらも、心の中ではめまぐるしく思考を回転させていた。
次の瞬間、紗英子は直輝に言ったのだ。
―あ、でも、そういえば、この間、有喜菜が言ってたっけ。F組の杉田君のことが一年の頃から、ずっと気になってたって。
紗英子はあの時、直輝の顔色を上目遣いに眺めながら、さり気なく反応を見守った。そう、あくまでもさりげなさを装って。心に邪(よこしま)で醜い野心と嫉妬を隠していることなど、大好きな彼に気ぶりほども悟られないように。
例えば、休み時間にわざと数学の問題集を持っていって、〝ここが判らないの、教えてくれない?〟と訊ねてみたり、あるときは手作りの弁当を二人分持参してみたり。
そんなある日、直輝に突然、訊ねられた。
―有喜菜って、誰か好きな男はいるのかな?
あれは紗英子にとって思いもかけぬ爆弾発言であった。
―さあ? どうなのかしら。
紗英子は愛らしく首を傾げながらも、心の中ではめまぐるしく思考を回転させていた。
次の瞬間、紗英子は直輝に言ったのだ。
―あ、でも、そういえば、この間、有喜菜が言ってたっけ。F組の杉田君のことが一年の頃から、ずっと気になってたって。
紗英子はあの時、直輝の顔色を上目遣いに眺めながら、さり気なく反応を見守った。そう、あくまでもさりげなさを装って。心に邪(よこしま)で醜い野心と嫉妬を隠していることなど、大好きな彼に気ぶりほども悟られないように。