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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第10章 ♦RoundⅧ 予知夢~黒い霧~♦
が、直輝が選んだのは結局、この自分であり、有喜菜ではなかった。彼が有喜菜を選ばなかったことに、紗英子のついたささやかな嘘が関係しているのかどうかまでは知らない。けれど、あれから既に気の遠くなるような年月が流れた今、紗英子がついた嘘など、時の流れという大河の底深く沈んでいった小石のようなものではないか。
これだけの年月が経った今、二十三年前に、誰が何を考えていたかなんて、どうでも良いことだ。以前、流行った刑事物のドラマで、主人公の名刑事が番組の終わりにはいつも口にする決め科白があった。〝真実はいつか必ず明らかになる。他人を出し抜き、陥れ、罪を犯したからには、一生のうのうと生きられると思うな〟。
とはいえ、紗英子は別に何の罪を犯したわけではない。ただ、小さな嘘を一つついただけ。
しかも、もしかしたら有喜菜には本当にその頃、直輝ではなく別に好きな子がいたという可能性だって全くあり得ない話ではないのだから。
これだけの年月が経った今、二十三年前に、誰が何を考えていたかなんて、どうでも良いことだ。以前、流行った刑事物のドラマで、主人公の名刑事が番組の終わりにはいつも口にする決め科白があった。〝真実はいつか必ず明らかになる。他人を出し抜き、陥れ、罪を犯したからには、一生のうのうと生きられると思うな〟。
とはいえ、紗英子は別に何の罪を犯したわけではない。ただ、小さな嘘を一つついただけ。
しかも、もしかしたら有喜菜には本当にその頃、直輝ではなく別に好きな子がいたという可能性だって全くあり得ない話ではないのだから。