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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第10章 ♦RoundⅧ 予知夢~黒い霧~♦
 だから、大丈夫。自分は何も悪いことはしていないのだし、怯える必要はない。そう言い聞かせてみても、何故か、後味の悪さは消えない。おかしいと思った。いつもなら忘れているような過去のささやかな嘘が、どうして今日はこんなにも鮮やかに記憶に甦るのか。
 昔のことを考えたから、こんな奇妙でおぞましい夢を見てしまったのだろうか。
 今や、すっかり霧が晴れた向こうで、全裸の直輝と女―どう見ても有喜菜にしか見えない―が抱き合っている。
 むろん、女の方も一糸纏わぬ生まれたままの姿で、下になった直輝に大きく両脚をひらいた格好で跨った女があられもない声を上げ続けている。
―いやっ、あんなもの、見たくない。
 紗英子は思わず両眼を固く閉じ、顔を背けた。
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