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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第10章 ♦RoundⅧ 予知夢~黒い霧~♦
 紗英子がなかなか電話に出ないので、傍らのベッドで眠っていた直輝が先に出たようである。
「もしもし」
 まだ眠さの残るけだるげな声で応対していた夫の声が突如として一転した。
「はい、はい。判りました。すぐに行きます」
 直輝は早口で言い終えると、携帯を握りしめている。その横顔には、かつて見たこともないほど切迫したものが漂っている。
「あなた、どうかしたの?」
 恐る恐る訊ねると、夫は低い声で応えた。
「産気づいたそうだ。どうも尋常な様子ではないらしい」
 〝誰が〟と主語は略しているけれど、直輝が〝代理母〟のことを言っているのはすぐ判った。
「そんな。尋常じゃないって、どういうこと?」
 紗英子は夫に噛みつくように迫った。
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