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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第10章 ♦RoundⅧ 予知夢~黒い霧~♦
「三日前にクリニックで健診を受けたときは、何も問題はなかったのよ? 赤ちゃんも有喜菜も元気そのものだって言われたのに。なのに、何で、何で、有喜菜がそんなことになっちゃったの?」
 そこで初めて紗英子は自分が取り返しのつかない失態を犯してしまったことを知った。
 一瞬、後ろめたさに視線が泳いだ。夫の顔がまともに見られない。急いで何か取り繕う言葉を探してみたけれど、こんなときに限って、頭はまるで考えることを停止してしまったかのように働かない。
 怖々と顔を上げると、じいっとこちらを見つめている夫と眼が合った。
 短い、けれど一生分にも思える沈黙が二人の間に流れた。その危うさを孕んだ沈黙を破ったのは、直輝の方であった。
「俺はもう、知っている」
「―え?」
 刹那、紗英子は夫の言葉の意味を理解できず、次の瞬間には、心臓がそのまま凍りついてしまうのではないかと思った。
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