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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第10章 ♦RoundⅧ 予知夢~黒い霧~♦
「通常であれば、大病院だから十分、こっちでも対応できるが、今回は代理出産という特異なケースだ。だから、プライバシーや生まれた子どもの親権問題も絡めて、S市のクリニックの方で出産した方が良いという見方だったらしい。それでも、妊婦本人が望めば、当人や胎児の安全を最優先させて、そのまま出産ということもできた。だが、有喜菜は―代理母はS市のクリニックで出産することを望んだ。自分の生命は二の次で良いから、生まれてくる子どもの生命、更に子どもを待ちわびる実の両親のためにも、最後まで代理出産を依頼した家族のプライバシーは守りたいと」
「あ―」
 紗英子は声をつまらせた。生まれてくる子どもの生命と子どもを待ちわびる家族のプライバシーは守りたい。有喜菜はそう言ったのだ。
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