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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第10章 ♦RoundⅧ 予知夢~黒い霧~♦
 S市のエンジェル・クリニックに到着した時、既に夜は明けていた。始発を待って乗り込み、S駅からはタクシーを飛ばしても、時間は八時を回っていた。このときはもう有喜菜の出産は終わっていた。
 未明にドクター・ヘリでN町の総合病院からS市のクリニックに搬送された有喜菜は直ちに帝王切開の手術を受けた。
 処置が適切で何とか間に合ったこともあり、手術は無事に終わり、母子共に異常はないと聞かされ、紗英子の眼に涙が溢れた。
 不妊治療を受ける患者は別棟の不妊治療外来に行くが、妊娠確定後も一般の妊婦たちと同じ扱いではなく、従来の不妊治療外来で経過を診る。特に代理出産のようにデリケートでプライバシーの守秘を厳重にする必要がある場合は、こちらですべてが行われる。
 しかし、それも出産から後は一般の産婦人科病棟に移り、一般のお産と同じように扱われた。
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