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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第10章 ♦RoundⅧ 予知夢~黒い霧~♦
新生児室は、その一般病棟の三階にあった。向かいにナースステーションが見え、新生児室は全面がガラス張りの窓になっており、来院者たちからも内部の様子が見られるようになっている。
 今もたくさんの赤ちゃんたちがコット(移動式のベビーベッド)に寝かせられている。大声で泣きわめく強者や、すやすやと寝入っている落ち着き屋もいて、生まれたての赤ちゃんとはいえ、人間というものは、こうまで早々と個性を持っているのかと愕かされる。
 紗英子は若い看護士に案内され、ガラス張りの窓に近づく。向かって最奥から二番目、ピンクのベビードレスを着ているのが紗英子の―いや、紗英子と直輝の子どもであった。
 コットの前面には〝宮澤有喜菜様 出生 2013.11月10日 A.M.5:06〟とプレートに書いてある。赤ん坊の小さな手首には女の子であることを示すピンクの腕輪がはめられていた。
 やはり、建前上、この子の母親は有喜菜ということになっているが、それはこの際、問題ではなかった。
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