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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第10章 ♦RoundⅧ 予知夢~黒い霧~♦
五日後、紗英子は再びS市のエンジェル・クリニックに赴いた。
有喜菜は三階の右端の部屋にいた。今回は特に特等個室ではなく、ごく一般的な個室である。
軽くノックしても返事がなかったため、紗英子はドアを開けた。
有喜菜は既に歩行もできるようになっており、そのときはベッドの上に身を起こしていた。
傍らに小さなコットが置かれている。中を覗き込むと、赤ん坊がすやすやと寝息を立てていた。
「今回は色々と大変だったわね。でも、お陰で元気な子どもが生まれたわ。本当にありがとう」
その後で代理出産の報酬は今日付で有喜菜の指定口座に振り込むことを告げた。
他にかけるべき言葉は何もなかった。
ともすれば、烈しい感情が殻を破って暴れだそうとしている。気を許せば、夫を奪った女、約束を破った卑怯者と罵倒の言葉を投げつけてしまいそうな自分が怖かった。
有喜菜は三階の右端の部屋にいた。今回は特に特等個室ではなく、ごく一般的な個室である。
軽くノックしても返事がなかったため、紗英子はドアを開けた。
有喜菜は既に歩行もできるようになっており、そのときはベッドの上に身を起こしていた。
傍らに小さなコットが置かれている。中を覗き込むと、赤ん坊がすやすやと寝息を立てていた。
「今回は色々と大変だったわね。でも、お陰で元気な子どもが生まれたわ。本当にありがとう」
その後で代理出産の報酬は今日付で有喜菜の指定口座に振り込むことを告げた。
他にかけるべき言葉は何もなかった。
ともすれば、烈しい感情が殻を破って暴れだそうとしている。気を許せば、夫を奪った女、約束を破った卑怯者と罵倒の言葉を投げつけてしまいそうな自分が怖かった。