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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第10章 ♦RoundⅧ 予知夢~黒い霧~♦
「約束を果たせて良かった。これで、私の役目も終わったのね」
有喜菜は淡々と言い、視線を動かした。
その先は赤ん坊に向かっている。
「この子はあなたに返すわ。だから、彼を私にちょうだい」
有喜菜は紗英子の方を見ようともしないで言った。
「報酬も要らないから」
「子どもと報酬の代わりに、彼を渡せというの?」
その時、有喜菜が初めて紗英子を見た。
「別にそんなつもりはないわ。ただ、彼が言っていたの。私たち―むろん、紗英と直輝と私、三人のことだけど―は、きっと進むべき道を間違ったんだろうって。間違いに気づいたならば、今からでもそれを正すべきだってことも」
「彼が私を選んだのが間違いで、あなたを選ぶべきだったとでもいうの?」
興奮と屈辱に、つい声が上擦った。
有喜菜は淡々と言い、視線を動かした。
その先は赤ん坊に向かっている。
「この子はあなたに返すわ。だから、彼を私にちょうだい」
有喜菜は紗英子の方を見ようともしないで言った。
「報酬も要らないから」
「子どもと報酬の代わりに、彼を渡せというの?」
その時、有喜菜が初めて紗英子を見た。
「別にそんなつもりはないわ。ただ、彼が言っていたの。私たち―むろん、紗英と直輝と私、三人のことだけど―は、きっと進むべき道を間違ったんだろうって。間違いに気づいたならば、今からでもそれを正すべきだってことも」
「彼が私を選んだのが間違いで、あなたを選ぶべきだったとでもいうの?」
興奮と屈辱に、つい声が上擦った。