この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第10章 ♦RoundⅧ 予知夢~黒い霧~♦
看護士はおくるみに包まれた赤ん坊を紗英子に返した。
「でも、この子、本当にお母さんによく似てますね」
「お母さんって、私のこと?」
紗英子がきょとんとするのに、看護士は笑う。
「当たり前ですよ。この子のお母さんっていえば、矢代さんしかいないじゃないですか」
その科白は紗英子の心をついた。
この子のお母さんといえば、私しかいない。
思わず涙が溢れてきた。
どうして、この子の存在をただの一瞬でも否定したりしたのか。苦い後悔がよぎった。
その刹那、迸るような愛おしさが身体の芯から突き上げてきた。
―この子は私の子ども。たとえ他人の腹を借りて生まれてきても、紛れもない私自身の血を引く我が子なのだ。
私はもう母親なんだわ。
私にはもう、この子しかいない。
紗英子は赤ん坊を抱く腕に、ほんの少しだけ力を込めた。先ほどまで涙の膜の向こうでぼやけた花の色が今は、はっきりと見えた。
「でも、この子、本当にお母さんによく似てますね」
「お母さんって、私のこと?」
紗英子がきょとんとするのに、看護士は笑う。
「当たり前ですよ。この子のお母さんっていえば、矢代さんしかいないじゃないですか」
その科白は紗英子の心をついた。
この子のお母さんといえば、私しかいない。
思わず涙が溢れてきた。
どうして、この子の存在をただの一瞬でも否定したりしたのか。苦い後悔がよぎった。
その刹那、迸るような愛おしさが身体の芯から突き上げてきた。
―この子は私の子ども。たとえ他人の腹を借りて生まれてきても、紛れもない私自身の血を引く我が子なのだ。
私はもう母親なんだわ。
私にはもう、この子しかいない。
紗英子は赤ん坊を抱く腕に、ほんの少しだけ力を込めた。先ほどまで涙の膜の向こうでぼやけた花の色が今は、はっきりと見えた。