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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第3章 ♠RoundⅡ(哀しみという名の現実)♠
―お前が必死になればなるほど、俺の気持ちは冷えてゆくんだ。こんな気持ちでセックスなんて、できると思うか?
 毎度、同じような繰り返しが続いた。時には
―お前はそんなにまでセックスがしたいのか! この淫乱女め。
 聞くに堪えないような嘲りの言葉を投げつけられたこともある。
 あの時、直輝に突きつけられた科白が今、まざまざと耳奥で甦ってきた。
 直輝が座ると、ベッドがわずかに軋んだ。覆い被さってきた夫を見上げ、紗英子は感情のこもらない声で聞いた。
「どうして?」
「―」
 直輝の眼が訝しげに細められる。
 紗英子はもう一度、はっきりと言った。
「どうして、今なの?」
 あのときは私を色情狂扱いして、夫婦の営みには協力してくれなかったのに。私はあの夜だけに向けてひたすら努力して体調を整えてきたのに、あなたは無情にも背を向けた。それでも、私はあなたに何度もお願いと言って懇願した。
 その翌朝まで、紗英子は泣き通しだった。生理が終わってから排卵日を迎えるまでの夜、自分がしてきた努力は一体何のためだったのかと問いかけながら―。
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