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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第4章 ♠ RoundⅢ(淫夢)♠ 
♠ RoundⅢ(淫夢)♠ 

 翌朝の目覚めはすごぶる悪かった。
 それにしても、あんな夢を見るなんて。
 紗英子は眉をしかめながら、緩慢な動作で起き上がった。頭が重い。
 まだ退院してまもないのだから、体調が一人前でないのも仕方ないのかもしれない。そうは思いながらも、身体が気持ちについてゆかない現実に紗英子は苛立った。
 少し吐き気もする。こめかみにズキリとした痛みを憶え、紗英子はふらつく身体を意思の力で支えるようにしてキッチンまで歩いた。病院から処方された鎮痛剤と吐き気止めを水で流し込む。
 薬がすぐに効くはずもないが、冷たい水は今の不快感を少しは和らげてくれた。
 キッチンには四角いテーブル、椅子が置いてある。その一つに腰を下ろし、紗英子は長い髪を無造作にかき上げた。途端にたくさんの髪の毛が抜け落ち、床に散らばった。
 これも女性ホルモンの影響だろう。医師が言っていたことを、ぼんやりと思い出す。
 子宮摘出後は、女性ホルモンが減少するため、更年期障害のような症状が出るだろうと言われた。
―矢代さんの場合は、卵巣が機能していますから、そこまで深刻にはならないでしょうが、それでも、来るものは来るでしょう。もちろん、そういった症状は薬を適宜処方して服用することによって対応してはいきますので、ご心配なく。
 その症状の一つとして、大量の髪の毛が抜け落ちることもあり得る―と予め聞かされてそれほど愕きはしないが、やはりショックは隠せない。
 それにしても、あの夢は一体、何だったのだ。
 紗英子はまた、神経質に髪の毛をかき上げ、抜け落ちた髪の毛に眉を寄せる。
 あんな夢を見たのは生まれてこのかた、初めてだ。途方もない、淫らな夢。
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