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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第4章 ♠ RoundⅢ(淫夢)♠ 
 また沈黙。しばらくして、直輝が小さく応えた。 
「そっか」
 それきり、気まずい雰囲気が二人の間に漂った。紗英子は何か喋らなければならないような気がして、口を開く。
「有喜菜が言ってた。中一の頃、直輝さんの家に遊びにいって、そこで時計のコレクションを見せて貰ったんだって。それで、私にそのことを教えてくれたのね」
 直輝は依然として何も言わない。紗英子は二人の間の空白を埋めたい一心で、またもや次の言葉を発した。
「私ったら、そんなこと、全然知らなかった。直輝さんが腕時計を集めてたなんて、昨日、有喜菜から聞いて初めて知ったのよ」
 ちょっとショックだった。
 言おうかどうしようかと迷った末、とうとう口にしてしまった。
「直輝さん、何で私には教えてくれなかったの? ―っていうか、そのコレクションを見せてくれなかったの? まるで私だけがのけ者にされているようで、哀しかったわ」
 あれほど責める言葉は口にしてはいけないと自戒していたというのに、やはり、言ってしまった。
 そう思っても、言葉は二度と取り戻せやしない。そうなると、直輝がなかなか応えないことにも意味があるような気がして、余計に苛立ってしまう。
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