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Tears【涙】~神さまのくれた赤ん坊~
第4章 ♠ RoundⅢ(淫夢)♠
「ねえ、どうして?」
「別に理由なんて、ないさ」
「でも、そんなに腕時計に興味があるのなら、私と付き合ってた頃に、少しでも、そういう話をしたはずじゃない?」
「誰だって、他人には話さずに大切にしまっておきたいものがあるだろ」
「他人? 私は直輝さんにとって、他人なの?」
「そういう問題じゃないだろうが」
「話をはぐらかさないで。私が他人だから話したくなくて、有喜菜には話せた? なら、有喜菜は一体、あなたの何なのよ?」
「そういう言い方は止せ。別に有喜菜が悪いわけじゃない。俺が―ただ、お前に話さなかっただけだ」
そのひと言は紗英子の心を鋭く抉った。
―俺がただ、お前に話さなかっただけだ。
自分一人で大切にしておきたいことは、他人には話さないと直輝は言う。ならば、その大切なことを話した有喜菜は他人ではないということになる。では、話さなかった紗英子は何なのだろう?
私は彼にとって何なの?
直輝に愛されて、彼のことなら何でも知っている―つい先刻までは自信に満ち溢れていたのに、今はこんなにも心許ない。もしかしたら、良い気になっていたのは紗英子一人だったのか?
「別に理由なんて、ないさ」
「でも、そんなに腕時計に興味があるのなら、私と付き合ってた頃に、少しでも、そういう話をしたはずじゃない?」
「誰だって、他人には話さずに大切にしまっておきたいものがあるだろ」
「他人? 私は直輝さんにとって、他人なの?」
「そういう問題じゃないだろうが」
「話をはぐらかさないで。私が他人だから話したくなくて、有喜菜には話せた? なら、有喜菜は一体、あなたの何なのよ?」
「そういう言い方は止せ。別に有喜菜が悪いわけじゃない。俺が―ただ、お前に話さなかっただけだ」
そのひと言は紗英子の心を鋭く抉った。
―俺がただ、お前に話さなかっただけだ。
自分一人で大切にしておきたいことは、他人には話さないと直輝は言う。ならば、その大切なことを話した有喜菜は他人ではないということになる。では、話さなかった紗英子は何なのだろう?
私は彼にとって何なの?
直輝に愛されて、彼のことなら何でも知っている―つい先刻までは自信に満ち溢れていたのに、今はこんなにも心許ない。もしかしたら、良い気になっていたのは紗英子一人だったのか?