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真夜中の贈り物
第11章 マタニティー・リターナー
「電話……兄貴から。声……聞かせてやって」
そう言ってキョージが差し出したケータイを、寝室のベッドに横たわったまま咲良は受け取った。
――もしもし咲良ちゃん? 具合はどう……?
具合というのは咲良自身のことでもあったが、それだけではない。
咲良はマタニティパジャマの大きなお腹に手をやった。
「ええ……順調です。お陰様で」
ベッドがきしむ。寝間着に着替えたキョージが乗って来たのだ。
横向きに、仏陀の涅槃の姿勢で体を伸ばす咲良の背中の側にピタリと身を寄せて温めてくれる。
お腹に当てた咲良の手に自分の手を重ねて、いっしょにさすってくれる。
――そうか。病院のほうも……?
「はい。先生方も秘密をしっかり守って下さっているようですわ。今の所何も……氷堂の手は及んでおりません」