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真夜中の贈り物
第15章 薔薇のひとつ
女に兵隊など務まるわけがない。初めは誰にもそう言われた。しかし、彼女はそんな言葉に反論する代わりに、実直に軍務に励んだ。
男を基準とした隊規にも文句を言わず、他の兵士たちと同じように過ごし、同じ仕事をした。実績に勝る雄弁はないのである。
年頃の若い娘が男たちの集団の中で行動を共にするのである、性的ないやがらせや貞操の危機もあった。
しかしそれでも彼女はその度に気転と度胸、そして時には毅然たる態度を示すことでそれらを切り抜け、やがて二十歳を過ぎる頃には少しずつだが、彼女を認め、理解し、支えてくれる仲間が周りに出来ていった。
「そなたが隊長として、これからもいっそう……神と王都への篤い忠義を示さんことを」
そう言って、枢機卿は差し出されたノヴァリスの中指に指輪をはめる。それは近衛隊の隊長に与えられる栄誉の印でもあった。
「……はい。命に替えましても」
ノヴァリスは自分の指につけられた隊長の証に目を落した。