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真夜中の贈り物
第15章 薔薇のひとつ
男だらけの兵士たちの間にあって、女であるノヴァリスの軍装姿は嫌でも目を惹く。おまけに美貌の持ち主ときている。
二角帽からこぼれる金色に輝く髪の艶、大きく張り出したチョッキの下の乳房の膨らみ、燕尾にチラチラと目を引く丸みを帯びた尻の曲線。
軍服という男装であってすら――いや、だからこそなのかもしれないが、その女らしい美しさは際立ち、輝いていた。
凛々しくひきしまった彼女の顔立ち。その面影には、王都にほど近いシュープルーズ領を治める由緒正しき貴族の血統の気品が漂っている。
取り巻きの者らは癇癪を恐れて口にはせぬが、自分が醜いということは夫人自身がよくわかっている。それによる嫉妬の心がノヴァリスに向かうのである。
「……女であることは私の世話をするのにも丁度良いとは思っていましたが、そなたが指揮をとるのでは少々、頼りない気もいたしますわね」
そんなことはないということは、ほとんどの部下たちが知っている。ノヴァリスが近衛隊長を任されたのは実力である。剣技ひとつをとっても、男の彼らがかなう腕前ではないのだ。
しかし、中にはそう思っていない者もいた。
「ヘヒヒッ……どうぞ奥方様、馬車にはこの俺の手を取ってお上がり下さい。全く、隊長ときたら気が利きませんもので」
そう言って、仏頂面の夫人ににすっと手をさしのべたのは、副隊長のアサージだった。