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真夜中の贈り物
第15章 薔薇のひとつ
※ ※ ※
「そなた、隊長に昇進したのかえ」
近衛兵による護衛隊を引き連れ、豪奢な屋敷へと出迎えに参上したノヴァリスをジロリと眺め、枢機卿婦人が無愛想に言う。
「はっ……これからも増々王都の為に励みたいと思います」
「たかが馬車までの間とはい、エスコート役が女とはなんとも気が利かぬのう……」
わざとらしく天を仰いで嫌味を言う枢機卿夫人。
国務大臣の娘であった彼女は大変な醜女であったが、枢機卿との政略結婚によって今やこの国では誰も逆らえぬほどの権勢を手に入れていた。
しかし、もともとねじ曲がった性格の上、多忙を極める枢機卿にほとんど相手をしてもらえぬ無聊から、夜毎日毎にパーティを主催しては、おべんちゃらの取り巻きたちと贅を尽くした放蕩にふけり、民衆や、心ある近習からは忌み嫌われていた。
自分が一番注目され、ちやほやさるという立場に慣れきってしまった夫人はかねてより、ノヴァリスのことを煙たがっていた。