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真夜中の贈り物
第15章 薔薇のひとつ

「あの女を殺すのに、いちいち理由を尋ねるような者はいないだろう。そう、彼女は死んだよ。身体を切り刻んで野に晒してやった。そうされて当然の女だからな。誰からも恨まれていた……そして」

 フェリックスが腰のベルトから、膨らんだ小袋を外してアサージに放る。
 両手で受け取ったその袋がジャラリと硬貨がぶつかり合う音を立て、アサージが卑屈な表情を浮かべる。

「へへっ……ありがとうございやす、フェリックスの旦那」

 フェリックスが再びノヴァリスに向き直り、表情を変えずに言う。

「……というわけだ。彼には金が必要だった。全くいい世の中だな、金がなければ善良であっても生きることすら叶わぬが、金さえあれば何でも手に入れることができる……そんな世界を創ったのはお前たち、貴族どもなのだから文句はあるまい」

「……す、全ての貴族がそうなのではないわ!」

「そうか、だが、どうでもいい。もう、言葉で解決するつもりもない」

 にべもないという態度でフェリックスが応じる。
 言葉を荒げるでもなく、抗弁するノヴァリスをなじるでもなく。

 そのそっけないほどの平静さに逆に不穏なものを感じる。

「……どういうこと?」
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