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真夜中の贈り物
第15章 薔薇のひとつ
「……その通りだ」
よく通る太い声がしして、アサージと野盗どもの後ろから、一人の男が姿を現した。
男は頬から顎にかけて灰色の髭を薄く生やしていた。
頭髪もまた髭と同じように薄くだけ残して小ざっぱりした印象を与え、どことなく知的な雰囲気が感じられた。
しかし、筋骨たくましいその体のそこここにある古傷と、左目を縦に切りつけられた刀の痕は、彼が尋常な暮らしを送って来た者ではないことを物語っていた。きっと、この野党たちの頭だろう。
「お……お前は……?」
「初めてお目にかかる、ノヴァリス・シュープルーズ隊長殿。俺の名はフェリックス・ジュビリ。こいつらのボスだ。そして貴女の部下のアサージ君に今回の協力を持ちかけた張本人でもある」
フェリックスと名乗ったその男は、野盗らしからぬ品のある物言いでノヴァリスに向かってお辞儀までしてみせた。
しかし、床に無造作に転がされたまま受ける礼儀などない。
ノヴァリスはすぐさま立ち上がり、フェリックスと正面から向き合った。
「奥……奥方様をどうしたの! 貴方たちは何が目的でこんなことを……」