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Memory of Night
第7章 夏祭
祭は派手に騒ぐもの。
宵はそう思っていたが、晃は宵の抗議をまったく聞こうとしない。
しりもちをついたままの宵に視線を合わせるように屈みこみ、身を乗り出して迫ってくる。
宵が、体を引こうと手に力をこめる。
「動いちゃダメ。できないだろ?」
「……ッ!」
晃は手早く宵の両腕を掴み、畳の上に押さえ付けた。そうして自分も宵の体を跨ぎ、膝をつく。
「乗るな! どけよ!」
「メイクが終わったらね」
この体勢だと手が使えないので、晃は一度体を浮かせ宵の腕を膝で押さえ直した。
下地ようのクリームを手に持ち、丸い蓋を開けて中のクリームを手の平で掬う。
「目、つぶって」
「誰……がっ」
膝を立て、畳を傷つけかねないほど強く手の爪を立て宵が晃から逃れようとする。
気丈な瞳で睨めつけてくる宵に、晃ははぁ、とため息をついた。
「少しは言うことを聞け。すぐに済むから!」
晃は基本的に、中途半端なことは嫌いな性分だ。
女装するなら徹底的に。
ゆかたを纏い、髪を結うことまではさせてくれたのだから、仕上げのメイクもさせてほしい。