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Memory of Night
第7章 夏祭

「あっちの木陰で食べようか」
怒って反抗するのも無視するのも面倒なだけで無意味な気がして、宵は晃に促されるままその後ろ姿を追った。
姫橋自然公園には数メートル感覚で木が植えられている。
少しでも真夏の暑さをしのげる場所をと出店の並ぶ通路を外れ、人のあまりいない場所を探した。手頃な木を見つけ、その下に宵を座らせた。
ここなら足下にはしばふが敷き詰められているのでゆかたが汚れなくてちょうどいい。
自分も腰を下ろそうとして、あることに気付く。忘れ物。
「宵、ごめん。俺巾着忘れたみたいだ。取ってくるからここで待ってて?」
巾着は、本当はゆかたとセットで宵が持つはずの物だが、宵は怒って持ってくれず、仕方なく晃が手に下げていた。
それがいつの間にかなくなっていて、ジーンズやシャツのポケットを探っても見つからなかったのだ。
もしかしたら、さっきりんご飴を買った時に忘れてきたのかもしれない。
「はい、コレ」
晃は宵にさっとりんご飴を手渡すと、もと来た方へとあっという間に走っていってしまった。

