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Memory of Night
第8章 花火
顔を背けた宵の瞳に、手すりで囲まれた川が見えた。
川の周辺は、浮かんでいる蛍の数が他より多い気がする。
夜の闇に浮かぶ黄色がかった蛍の光は、どこか神秘的で美しい。
(すげー……綺麗だな)
綺麗で、なんだか懐かしくなるような情景だった。
宵はベンチから立ち上がり、川に向かって歩いた。
かすかに擦れた足が痛んだが、ベンチからほんの十歩程度なのでそれほど気にはならない。
腰の辺りまでしかない手すりに軽く両手を添えて、川を眺めた。
数メートルほどの幅しかない水面には月が映っている。水が澄んでいるのか、映った月の下には小さな魚も見えた。
宵はしばらく水面に映る月を眺めていた。
ゆらゆらと揺れる月を見ていると、晃にもらった髪飾りをつけた自分の姿が視界の隅に入った。
瞳を細め、その髪飾りを見つめる。
どうしてこんなもの……自分にくれたのだろう。
祭に誘われた理由もわからない。晃の考え自体、宵にはわからないことばかりだった。