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Memory of Night
第8章 花火
今は、宵のすべてが欲しい。
もっといろんな表情が見たかった。昼間みたいに、笑ったり怒ったり、頬を赤くしたり。
隣で宵とずっと話していられるだけで、そんな顔を見ていられるだけで、こんなにも楽しい。
それだけじゃない。
さらさらした髪に触れ、唇にキスしたい。白い肌を撫で、その体を抱きたい。
そして、そのまま自分の腕の中に閉じ込めてしまいたかった。
ふいに晃は自分の胸をかきむしりたい衝動に駆られた。
噛み合わないいくつもの思いが胸の内で交錯し、晃は堪らずに、宵から目をそらした。
こんな気持ちは初めてだった。
だから探した。静かに目を閉じて、自分の中の気持ちをゆっくりと辿る。
そうして、行き着いた答え。
「――好きなんだ、俺は。本気で宵のこと」
それは遊びや、一時の慰めなんかじゃない。ただその見目を気に入って、側に置きたいというのでもない。
宵にも自分を思ってほしいのだ。心も体も、すべてを自分のものにしたかった。
……だけど、宵を金で買っておいて、おもちゃのように扱いひどい言葉で傷つけておいて、今さらそんなふうに思うのはとてもずるいことのように思えた。