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Memory of Night
第8章 花火

閉じていた瞳を、ゆっくりと開けた。
再び宵に視線を戻す。
その時、満月に近い丸みを帯びた月を、周辺の雲が隠した。辺りを闇が包み始める。
漆黒の髪と青いゆかたのせいか、宵の姿も月と一緒に闇にまぎれてどこかへ消えてしまうんじゃないか。
そんなわけのわからない焦燥にかられて、晃は小走りで宵のそばに駆け寄り、肘の辺りを掴んだ。
弾かれたように、宵が振り返る。
宵の目は大きく見開かれ、晃の姿を確認するとすぐに細められた。その顔は、いつもの宵の顔だった。
「……なんなんだよおまえ。急におどかすな」
掴まれた腕を振りほどきながら言う。
「いや……。身投げでもしてるのかと思って」
「身投げって……」
自分でも、なんだかよくわからないことをつぶやいてしまう。
「……なんで死ななきゃなんねんだよ? だいたい、こんな浅い川飛び込んだって死ねねーよ」
宵の言葉に晃が苦笑する。
この川は、深い場所でもせいぜい膝くらいまでしか水かさがない。流れもとても緩やかだから、夏などは小さな子供のかっこうの遊び場になっていた。

