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Memory of Night
第8章 花火
「宵。一つ……聞いていいか?」
「え?」
ちらりと向けられた灰色の瞳。その瞳を確認し、戸惑い気味に晃は続ける。
「あの志穂って人……あの人は、宵にとっての、何?」
「……は?」
いきなり何を言い出すのかと、宵は困惑の表情を浮かべた。
「何って……。だから母親だって前に言ったろ?」
「でも血は……繋がってないんだろ? 本当は、あの人は宵とは……」
どういう関係にあたる人なのか。
そう聞こうとして、晃は口をつぐんだ。
気まずげに宵から視線をそらす。
「ごめん。俺が聞くことじゃないよな」
つぶやいて、軽く髪をかきあげた。
宵の家庭事情に、晃が口を挟む権利はない。
それに宵は、十の時に両親が死んで養子に入ったのだと言っていた。
志穂との関係を話させれば、きっとそのことにも触れることになる。
それは宵には辛いだろう。
宵からの視線を感じる。自分を見ているのがわかる。
それでも、いつものように優等生の笑みを浮かべて自分を取り繕う気にはなれなかった。