この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Memory of Night
第8章 花火
宵の声はどことなく虚ろで、表情のない声だった。
ぽつりぽつりと、落とすような声。
晃が宵を見る。
空中を彩る花火と宙に浮かぶホタルのせいで、宵の表情の一つ一つがよく見えた。
どこかに影を潜ませたその顔は、思わず目を見張ってしまうほど綺麗だった。
ふいに宵が、目線の位置を変える。
「バカみたいだと思わねぇ? 一度や二度の過ち、きっと誰にだってあるのに。罪滅ぼしみてーに俺みてーなガキ引き取って……。あの人まだ十九だったんだぜ。女ってさ、その頃が一番いろいろできる時期なんじゃねーの? トモダチなんかと遊び行ったり、買い物したり、男作ったりしてさ」
宵の口調は、とても静かだ。
問いかけるような言葉を並べても、下を向いたまま晃を見ようとはしない。
まるで自分自身に問いかけているような、そんなニュアンスで続ける。
「なのに……俺みてーなガキがいたんじゃなんにもできねーじゃん。……それにあの人スゲー体弱くて、通院ばっかしてたんだ。薬も毎日飲んでたし。俺の養育費とか、学費とか、そーゆうのも全部稼いでくれてたから体の負担も大きかっただろーし……」