この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Memory of Night
第8章 花火
まだ笑っている。宵の無防備な笑顔は珍しくて、なんとなく見とれてしまう。
「笑いすぎだよ」
「お前が変なこと言うからだろ」
「変なこと……言ったつもりもないんだけど。宵のことが知りたかっただけだよ」
そこで宵は笑うのをやめた。探るように動く、灰色の瞳。
「知ってどーすんだよ、俺のことなんか」
「どうもしないよ。ただ知りたいだけ」
晃の声は相変わらず穏やかだ。
真っ直ぐに宵を見つめる晃の瞳。
それは無理に諭すようなものではなく、優しく見守るような視線だった。
宵の好きでいい。
まるで、そう言われているみたいだった。
晃に話すことに、抵抗は感じない。
晃になら話してしまっても構わないんじゃないかと、自然と思えてしまう自分が不思議だった。
宵は視線を再び地面に戻し、口を開いた。
「――あの人は……親父の浮気相手だったんだよ」
「浮気……相手?」
「そ。しかもたった一回きりの。……本当に、それだけの関わりしかなかったのに。親が死んだ日いきなり病院飛込んできて、俺のこと引き取るって言ったんだ」