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Memory of Night
第8章 花火
「俺が思うに、あの人は宵のこと、負担や重荷だなんて思ってなかったと思うよ」
夜の闇に溶けてしまいそうなほど小さな声なのに、耳の側で囁かれているせいでやけにはっきり聞こえる。
「宵は、好きだろう? あの人のこと。喩え血が繋がってなくたって、ちゃんと母親だって思ってるだろう? だから必死で金を貯めて助けようとしてるんじゃないの? ……志穂さんだって同じだよ。宵のことちゃんと愛してるから、自分の子だって思ってるから、見捨てたりなんかできなかったんだよ。思い出してみて? あの人との日々」
宵は目を閉じた。
暗い闇夜の向こう、両手を広げて微笑む志穂の姿が見える。
一緒に暮らしていた頃の思い出が、懐かしさと共に蘇ってくる。
思い返せば、学校から帰る宵をおかえりと言って出迎える時も、夕食の支度を終えて待っていた時も、志穂はいつも笑顔で、抱きしめてくれるその腕は温かかった。
性格も、自分への接し方も似ている部分は何もないのに、志穂から伝わる愛情の形は本物の母親となんら変わらない。