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Memory of Night
第8章 花火

「どんなに辛くたって、自分の子を捨てようなんて考える親はいないんだよ」

 手は宵の髪に触れたまま。呼びかける。

「宵。過去を悔やんだって仕方ないよ? 今は志穂さんが早く退院できるように、宵のできることをすればいい。……あ、でもあんまり無理はするなよ?」

 念を押すように宵の瞳を覗く。

「まだ若いんだし、それからだって遅くないんだから。元気になって退院できたら、オシャレもできるし遊びにも行けるし、恋人だってできるよ。……きっと幸せになれる」

 晃は宵の顎にそっと指を添え、紅の落ちかけた唇を触れるか触れないかくらいの柔やかさで撫でた。

「大丈夫。きっと治るよ、あの人の病気。俺も祈ってるから」

 どこまでも優しい声。
 晃の言葉と声は体中に染み入って、不安や罪悪感、知らず知らず胸の中に蓄積されていった鉛のようなものまで全部溶かされていく気がした。

「ねえ、宵」

 時間が経つのも忘れて宵が晃にもたれかかっていると、しばらくしてからふいに名前を囁かれた。

「キス……してもいい?」
「キス……?」

 ポロッとつぶやいて、それから顔を上げる。

「キス!?」
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