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Memory of Night
第9章 予感

「気持ち悪……い」

 宵のシャツにしがみついてきた明の手は蒼白く、爪までが紫に変色していた。

「……どこが大したことねーんだよ。ベッドまで歩ける?」

 一応頷き立ち上がろうと試みるが、やはり辛そうだった。

「いーや、無理しなくて」

 とは言うものの、こんなふうにしがみつかれてしまっては、先生を呼びに行くこともできない。
 もっとも、呼んできたところで貧血ではどうしようもないけれど。
 迷った末、宵は明の体を一度後ろへ倒した。

「ちょっと……っ」
「運んでやるからおとなしくしてろ」

 膝と首の間に手を差し入れ、できるだけそっと抱き上げる。
 一歩間違えればセクハラで訴えられそうだけれど、こんな状態で放っておくわけにもいかないし、他に手段が思いつかなかった。
 ベッドまで運び、座らせる。かけ布団と枕を取り払った。
 一人で体を支えるのが辛いのか、明は宵の胸に体をもたせかけながら焦点の合わない瞳で見上げてくる。

「……ありがとね」

 弱々しい礼に答えようとした時だった。
 突然ノックの音が聞こえ、保健室のドアが開いた。
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