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Memory of Night
第9章 予感
倉木は一度大きく喉を鳴らし、叫ぶように言った。
「お、お母さんの容態が急変したの……!」
その発言に、無意識のうちに体が強張る。心臓の鼓動が速まっていくのが自分でもわかった。
「病院まで送るわ! すぐ支度しなさい!!」
宵は、倉木の言葉を聞き終わる前に駆け出していた。
倉木の横をすり抜け、保健室を飛び出す。
保健室の前には晃達がいたが、まともに目を合わせている余裕もなかった。
一直線に下駄箱に向かった。
今まで、どんなに志穂の容態が悪化しようと学校に連絡が来たことなど無かったのに。
五限の終わりを告げるチャイムの音が響く。
外に飛び出すと、灰色の景色が広がっていた。
耳鳴りにも似た雨の降り続く音も。
思えば『あの時』も、こんなふうに土砂降りだったと、今さらながらに思い出す。
あの時も。
病院から、直接学校に連絡が来たのはたった一度きり――両親が事故で死んだあの日だけだった。