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Memory of Night
第11章 罠

 うすら笑いを浮かべ、威圧感を伴った瞳で宵を見下ろしている。
 その、高揚の色をたたえた瞳に、違和感を覚えた。

「残念だったなァ。よそ見しなけりゃ逃げ切れたかもしんねーのによぉ」

 嘲笑うように金髪は言う。
 宵は上体を起こし、男を睨みつけた。
 途端、男の表情が変わった。愉しげに見開かれていた双眸が細められ、苛立ったように口を閉ざす。

「……その目が気に食わねーんだよ」

 低い声だった。押し殺したような声色に、不気味さを漂わせている。

「ナメんじゃねーぞこらぁ!」

 男の手が、乱れて、所々泥のついた宵の髪を掴む。
 力任せに引き上げられて無理矢理顔を上げさせられた。
 引きつるような痛みと喉をそらした体勢を強いられたことで、自然と呻き声が漏れた。
 聞き分けの悪い子供にでも言い聞かせるように、猫なで声を絞り出して金髪は言う。

「……詫び、いれろよ。この間の無礼な態度を謝れや。……そうだなぁ、とりあえず土下座してもらおうか。泥水に頭つっこんで、もう二度と生意気な口は叩きません、許してくださいって言ってみろよ」
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