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Memory of Night
第11章 罠
男はまた、愉しげに笑う。周りにいた仲間連中からも、どっと笑いが起こる。
泥を纏って膝をつく宵を見下す男達の目は、下品で冷たい。
金髪男の表情の変化に、感じていた違和感はさらに強くなった。
喜怒哀楽の変化の異様な激しさと、血走った瞳。酷く興奮した男の様子。
宵は髪を掴む男の手首を、爪を食い込ませるようにして握り込んだ。
「……っ」
痛みに、金髪男は反射的に手を引っ込めようとする。食い込んだ爪が擦れて、引っ掻いたような傷と共に手に血が滲んだ。
すかさず別の男二人が宵の両脇を抑え込む。
それでも、宵は金髪男を見据えたまま視線をそらさなかった。
「あんた……クスリやってるだろ?」
男の反応を見定めようとするかのように、ゆっくりと金髪に問う。
宵の中ではすでに確信に近い物があった。
金髪男は口の端を上げ、目元を細め、不気味な表情を浮かべる。
「ああ」
たった一言で肯定。
自分の手首から滲む、徐々に濃くなる血液を舌ですくい取りながら、金髪は言った。
「クスリはいいぜぇ。頭がハイになる。どんなことでもクソみてーに笑えるし、気分がいい!」