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Memory of Night
第11章 罠

だが、まさかこんなクスリを用意しているとは思わなかった。
金髪男はゆっくりと、宵に針の先を向ける。軽く押し当てた場所は宵の左胸。
「これはドラッグっつーよりちょっとした毒薬でな。詳しいことは知らねぇが、神経を麻痺させるものなんだってよ。……ここに刺せば五分も経たねーうちにあの世行きだ」
そうして針の先を今度は首筋へと移す。
「ここでもいいな。散々苦しんでから死ねるぜ?」
ワイシャツ越しだったものがじかに肌に触れ、その冷たさにぞっとする。
金髪の口元が笑んだ。
「……その怯えた顔、いいな。コーフンする」
「変態」
針に向けていた目を金髪に向け、宵は冷笑を浮かべてみせた。
挑むように、男の目を見据える。
「この間は蹴り一発で逃げ帰ったくせに、よく言う。さしで勝負する勇気もねぇくせに。お仲間引き連れてこんな小道具用意しなきゃ、挑みに来れ……」
「うるせぇよ!!」
言葉を遮られ、頬をおもいきり殴られた。
痛みに声を上げる暇もなく、怒りに任せて立て続けに何発か殴られる。腹を、腕を。
宵に逃げるすべはなく、瞳をぐっと閉じてそれをやり過ごすしかなかった。

